HOME特別インタビュー/寄稿記事石田 晴久氏『サイバー大学への期待』

2005年6月より5年近くの長きにわたってLPI-Japanの監事を務められた石田晴久氏は、2009年3月9日に逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心からご冥福をお祈りいたします。

石田 晴久氏 『サイバー大学への期待』

こちらでは2007年1月26日に発行されたメールマガジン【LPI通信】の寄稿記事の全文を掲載しております。メールマガジンについての詳細はこちらからどうぞ。

LPI-Japan理事によるスペシャルコラム 第4弾〜石田 晴久氏『サイバー大学への期待』

2007年1月26日

特別企画「LPI-Japan理事のスペシャルコラム」第四弾として、LPI-Japan監事の石田 晴久 先生(多摩美術大学情報デザイン学科教授/東京大学名誉教授)に、2007年4月開校予定の『サイバー大学』についてご紹介いただきます。

日本初の完全インターネット講義の正規の四年制大学

石田晴久 氏
石田晴久 氏

近年、eラーニングの試みは、日本でも、企業では盛んであるが、教育の世界、とくに大学などの高等教育への浸透はまだ本格化していない。
ただ、そうはいっても、外圧の影響もあって、オンライン高校やeラーニング・ベースの大学院はすでに数校あり、予備校ではオンデマンド方式のビデオ授業が取り入れられていて、一部の大学の通信制コースでは、eラーニングが使われている。
 一方、韓国では、(スクーリングなしの)eラーニング専門の大学は17もあり、10万人を超える学生がインターネット経由で勉強している。またアメリカでは、フェニックス・オンライン大学だけでも16万人もの学生が、大学に通学せずに学んでいる。ちなみに、同大学は、通常の大学より高い授業料を取る代わりに、多数の教育スタッフをかかえて、並の大学よりもきめ細かく学生の面倒を見るというので、人気を博しているようである。  
こうした背景のもとに、わが国でも文科省認可を受けて、サイバー大学という名の本格的なオンライン大学がこの4月からいよいよ開校される。詳しいことは、サイバー大学Webサイトを見ていただきたいが、その概要は、次の通りである。

  1. 講義はVoD(ビデオ・オン・デマンド)方式で、インターネット経由で配信される。スクーリング(通学)は必要とされないので、キャンパスや教室はない。世界中のどこからでも、好きなときに、繰り返してアクセスしながら、勉強ができる仮想大学である。
  2. 4年生の大学であり、学部は、世界遺産学部とIT総合学部の二つ。定員は各学部600名。急ぐ人は3年で卒業できるが、12年かけてゆっくり学ぶこともできる。
  3. 運営は、学校法人ではなく、日本サイバー教育研究所(ソフトバンクが70%出資)という民間会社が行う。サイバー大は企業が経営する100%eラーニングの最初の大学である。これは、福岡市が作った教育特区に本部を置くということで認可された。
  4. 授業料は、1年いくらではなく、1単位\21,000である。これは、科目履修生にとってはいい話であろう。卒業に必要な最低単位数は、文部省の決めで124単位だから、授業料合計は最低で約270万円となる。これは私立大学よりは安い。さらに、交通費や下宿代がいらないことを考えると、もっと安いことになる。
  5. 入学の門戸が広く開いている。入学資格は、受験突破ではなくて、勉学への意欲である。入学試験はなく、書類選考で入れる。学費ローンの制度もあり、お金のあまりない人でも入学可能であろう。

このサイバー大学は、IT(とくにインターネットとパソコン)の発達で可能となった(従来はなかった)新方式の大学である。従来の大学とはあまり競合せず、大学教育の門戸を広く開ける存在だと考えられる。
学生は目下募集中だが、その多くは、働きながら学ぶ社会人になりそうである。定年退職者などで、今までやれなかった学問に取り組みたいという人も少なくない。高校出たての学生の中には、引きこもりや登校拒否などで、普通の大学には行けない人もいる。身体障害者にとっても、サイバー大はありがたい存在であろう。教員の中にも目の不自由な人がいるが、そうした先生の存在は、障害をもつ学生には励みになるに違いない。

さて、問題は、eラーニングのみで、教育が本当にできるかである。対面授業のなさを補う手段としては、電子掲示板、ブログ、メールなどを活用する。
全学生にWebカメラとプレゼン・ツールを配布するので、それを使って撮ったビデオ・ファイルをレポートして提出させる科目もある。実験の代わりには、各種シュミレータ・ソフトの活用も予定している。人とのコミュニケーションについては、オフライン・ミーティングを奨励するほか、インターンシップ、ボランティア活動、フィールドワークなどを活用する。

ところで、筆者は、サイバー大学で、IT総合学部の学部長を頼まれている。この学部では、コンピュータ科学(ソフト開発やLinus講義も含む)・インターネット(セキュリティ問題を含む)・コンテント(ネット)ビジネスの3コースを設定してある。
科目としては、数学を含む基礎的なものから、最新の技術トピックスを含む新領域までをカバーした多才な講義および演習科目を用意している。

わが国でIT技術者が不足している現状を打破し、優秀なIT技術者を増やすのにサイバー大学が貢献できることを願っている。会社で働いている技術者の方々には、いま自分に欠けている基礎的な勉強をしたり、最先端の技術を学んだりするのに、サイバー大学を活用することをおすすめしたい。

(LPI-Japan監事 石田 晴久 記)

石田晴久先生のご紹介
現職 多摩美術大学/評議員・メディアセンター所長・情報デザイン学科教授
株式会社 インターネット総合研究所 監査役(もと取締役会長)
東京大学名誉教授
略歴 1936年生まれ。1961年東京大学大学院修士課程修了、1964年米アイオワ州立大学で博士号を取得。1970年に東京大学大型計算機センター助教授、1982年から同センター教授。1997年3月に東大を退官し、4月から多摩美術大学教授。2001年多摩美術大学情報メディアセンター所長を歴任し、現在に至る。2007年4月よりサイバー大学 IT総合学部 学部長 就任予定。
主要著書 「インターネット安全活用術」(岩波新書、2004年)、「ブロードバンドを使いこなす」(岩波アクティブ新書、2002年)、「新パソコン入門」(岩波新書、2000年)、「インターネット自由自在」(岩波新書、1998年)、「パソコン自由自在」(岩波新書、1997年)、ほか多数

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